「あなたのビジネスが消える!?」 DX時代を生き抜くための必読書を紹介!

「あなたのビジネスが消える!?」 DX時代を生き抜くための必読書を紹介!

この記事は、2021年3月22日に日経BPより発行された『ZERO IMPACT(ゼロ・インパクト)~あなたのビジネスが消える~』の書評です。


本書は、第1章から第4章、そして、著者である鉢嶺登氏(デジタルホールディングス 代表取締役会長)と三木谷浩史氏(楽天株式会社 代表取締役会長兼社長)との特別対談収録により構成されています。

第1章   さほど未来ではない「未来」

第1章では、GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)を筆頭に、世界的なプラットフォーマーがまるで“サイバー植民地”とでも言わんばかりに、日本や世界を席巻している現状を記しています。

GAFAの影響度合いマップとして、
① 直接大きな影響を受ける業態、業種
小売り、流通、アパレル、自動車、金融、ヘルスケア、旅行、メディア、運輸、広告など
② 間接的だが大きな影響を受ける業態、業種
エネルギー、製造業、ホテル、教育、エンターテインメント、人材など
③ あまり影響を受けず、GAFAを有効活用すべき業態、業種
建設、農業、食品、外食、不動産、医療、化粧品、化学、介護など
と、分類しています。

特に仲介、代理、卸、比較サイトなど中間業者といわれる業態については、インターネットの最大の特徴の1つが、売り手と買い手を直接つなぐことである以上、「仲介業」は業態で見ても今後大きな影響が出てきます。分かりやすい例は、旅行代理店でしょうか。ただし、GAFAの影響が比較的少ない業界であっても、消費者がインターネットを利用する社会においては、多かれ少なかれ変革を迫られることになる点に留意が必要です。

第2章   あらがうか、向き合うか

第2章では、デジタル産業革命が起こす変化を決して他人事ではなく、自分事として取り組んでもらうために、著者自身が27年間感じてきたインターネットの変化と、それに合わせてどう事業を作り替えてきたのかについて体験とともに説明しています。

著者の鉢嶺登氏は、2020年7月1日に「オプトホールディング」を「デジタルホールディングス」へと社名変更しました。インターネット広告を主力とした事業は、あと10年は成長を続けることができたでしょうが、社名を変更してまで方向転換しようとしているのは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する企業へと生まれ変わる決意をしたためとのことです。
 
これからはデジタル産業革命に突入しあらゆる企業が全てデジタルに包括される中で、新しい価値を創造するデジタル人材の重要性についても語っています。特に、クライアントからDXについての問い合わせが増えている中で、クライアントから求められていることはインターネット広告そのものではなく、デジタルに関する知見である。という点も強調しています。

第3章   すべてのコストはゼロになる

第3章では、テクノロジーの進化によって、過去、どのように産業が変遷してきたのか、いかにコストゼロ社会の到来が夢物語でなく現実味を帯びたものであるのか、各業界ごとにコストゼロ化の流れがどのように迫ってくるのかを説明しています。

いつの時代も、テクノロジーの進化はコストを下げ、業界地図を塗り替えてきましたが、全ての産業革命に共通しているのは、「モビリティー」、「通信コミュニケーション」、「エネルギー」の3つの領域で変化が起きているということを具体的に紹介しています。これから本格期を迎える第四次産業革命においても、これらの業域では大きな変革が起きると予想されます。具体的には、エネルギーは化石燃料から再生可能な自然エネルギーに取って代わられます。通信コミュニケーション分野では、インターネットへのアクセスがパソコンやスマートフォンなど一部の機器から解放され、あらゆるハードウエアから接続可能になり、同時に多種多様なデータを取得できるようになります。そして、モビリティー分野では、クルマがネットにつながる(Connected)、自動運転技術搭載(Autonomous)、ライドシェアやカーシェアといったシェアサービス(Shared)、電気自動車(Electric)、いわゆる「CASE」へと大きく変貌します。

また、世界的な文明評論家のジェレミー・リフキン氏が2015年に発表した『限界費用ゼロ社会』(NHK出版)を引用し、これからの未来は限界費用がゼロに近づくことも説明しています。限界費用とは、経済学上の専門用語で、追加的費用の傾きがゼロに近づくことを意味しますが、その一番の理由はデジタル社会が進展するからです。例えば、デジタル商材は複製や保管、転送コストが実体のある『モノ』とは異なり、一度作ってしまえば、それを1単位追加的に提供するコストはほぼゼロに近い意味合いであることを解説しています。

第4章   コストゼロ時代にどう生きるか

第4章では、日本企業が採るべき具体的な対策について触れています。コロナ禍で日本社会は突然、価値観のアップデートを迫られ多くの経営者がDXに関心を示しました。感染拡大を防ぐため、国民は非接触、非対面を求めるようになり、デジタルの重要性が一気に高まりました。

著者によると、2020年前半までは企業にDXの提案に行っても門前払いが多かったのですが、コロナ以降はDXの重要性を本気で感じ真剣に話を聞いてくれるようになった経営者が一気に増加した印象とのことです。
一方で、残念なことに年齢とデジタル力(知識)は反比例するようで、著者は日本でDXが進まなかった大きな理由として経営者の年齢が年々上がっているという点を挙げています。帝国データバンクの調査によると、1990年の社長の平均年齢は54.0歳でしたが、2020年には60.1歳に上がっています。「失われた30年」と呼ばれる日本の停滞期に、経営者の高齢化が一気に進んだといえます。

DXは言葉の理解が人によって大きく異なり、同じ「DX」という言葉を使っていても、互いの理解が進まないといったことがよくあるようで、DXを「守り」と「攻め」に分類するとすっきり整理できるとのことです。

本章では、コロナ禍で芽生えた「サステナビリティ―」の価値観にも触れています。コロナによって世界中の人々が立ち止まり、社会や人類、地球について考えを巡らせる機会を得たことで生まれた意識の変化です。また、サステナビリティ―の価値観が広がったことで、「地球環境」・「格差是正」・「働き方」・「分散化」の4つを注目すべきトレンドとして挙げています。

また、企業がこれからの時代を生き残るための対策や必要な人材についても言及しています。これからの30年はデジタル産業革命に突入するのは確実のため、企業が着手しなければならないのは、トップのみならず、全社員のデジタルリテラシーを上げていくことで、社員のデジタルリテラシーが向上することは、人材価値そのものを向上させることに直結すると仰っています。つまり、デジタルリテラシー教育に投資する企業には優秀な人材が自然に集まる流れができるということです。

本章では「守り」「攻め」のDXについて説明しつつも、人間はバランスを取る生き物でもあり、デジタル化が進めば進むほど、人は人とのコミュニケーション、大自然との関わりや人間らしさを求めるようになります。そこに第3の可能性が生まれるとも仰っています。

デジタル産業革命時代では、あらゆる業種業態がデジタルに対応しなければ生き残れなくなります。しかし、デジタル化すべきところと、すべきではないところがあるのも現実です。人間らしい生き方や感性と、常にバランスが取れているかを意識する必要があります。何をデジタル化し、何をアナログとして残すことが最も魅力が高まるのか。こうした観点も忘れてはならない点も指摘している点に共感しました。

おわりに(一部引用)

1989年にバブル経済の頂点を迎えて以降、日本経済は長期的な低迷期を過ごしてきました。失われた30年といわれた過去を踏まえた上で、次の30年をどのように迎えるのか。日本は岐路に立たされています。

マクロ的視点に立てば、人口減少や少子高齢化など経済成長にとってのマイナス要因は確かに存在します。加えて、現在、多くの個人や企業が、予期せぬコロナ禍で苦境に立たされているのも確かでしょう。

しかし、だからこそ変革期なのです。過去30年、手をつけてこなかった全てがコロナ禍で顕在化しました。2001年にIT基本法が施工されて以降、20年たっているにもかかわらず、日本の行政サービスはデジタル化されず、コロナ禍でほとんど機能しないことが露呈しました。

しかし今、国は過去の反省を踏まえて、デジタル庁新設を急ぐなどチャレンジを始めています。「何もしてくれない」と民間企業が国に不平不満をぶつけている場合でしょうか。日本の戦後復興が奇跡と呼ばれたのは、いうまでもなく民間企業の力が大きかったはずです。国に寄りかかっているうちは、日本の再浮上は難しいでしょう。

テクノロジーの進化を見れば、未来は確度高く予測できます。そして変化は必ず訪れるのです。企業は座して待つのではなく、デジタル産業革命に自ら飛び込んで欲しいと思っています。必ずや日本が持つ強みが改めて見直され、光り輝く瞬間が訪れるはずです。

本書を通じて、一人でも多くの読者が、「デジタルを活用し新たな価値を創造する人材」へ向けた第一歩を踏み出していただくことを切に願います。

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